子どもの教育費は、家計に大きな影響を与えます。
特に小学校、中学校は公立だったら問題ないけれど、高校から私立で学費が大きな負担になる、
というケースがあります。
もちろん、その後の大学についての学費も考えておかなければなりません。
今回は、特に子どもが私立高校に進学する場合の負担から、
教育ローンや国の支援制度について解説していきます。
1. 私立高校の学費は公立高校の4倍以上
公立高校と私立高校の学費の差は、一般には2倍といわれています。しかし実際には、2倍では済みません。
平成31年度の東京都の例でみてみます。
私立高校の授業料平均は、年額460,546円です※1。
一方で、都立高校は、118,800円です※2。
4倍ほど違うことが分かります。
もちろん、私立高校は入学試験料から始まり、
入学金、施設管理費など、諸費用も都立高校に比べて高く設定されています。
たとえば入学金の平均は、私立で251,048円、公立で5,650円です。
※1 参考:東京都教育委員会 平成31年度都内私立高等学校(全日制)の学費の状況
※2 参考:東京都教育委員会 都立高等学校の授業料について
1-1. 私立の授業料は上昇傾向
また、最近では授業料などを値上げする私立高校が増えています。都内私立高校231校のうち、40校(17.3%)が値上げをしています※。
例えば、八王子の人気私立である明治大学付属中野八王子高校(偏差値69)は、都内で値上げ額の高い高校第5位に入っています(平成31年度実績)。値上げ額は90,000円です。
公立高校だと年度によって大きく授業料などが変わることはありません。しかし、私立はその経営上、政策的に授業料が改定されるケースがあります。
金額が安くなることもありますが、基本的には上がることのほうが多いです。平成31年に値下げをした都内私立高校は、わずか2校(0.8%)です。
2. 私立高校に受かった子どもの気持ちを尊重したい
私立に進学する子のなかには、第一志望の公立高校の滑り止めでというケースがあります。
しかし、これは少数派です。
公立高校の入試というのは、基本的には1倍台前半です。
平成31年度の都立高校では、最終応募倍率が1.40倍でした※。
このように、公立高校に落ちてしまって私立に行くのは、少ない流れです。特に偏差値の高い私立高校であればあるほど、そこを第一志望として必死に勉強した子たちが入ります。
何が言いたいかというと、せっかく難しい私立高校に努力して受かったのに、家計の事情を理由に入学を断念させるのは親として忍びない、ということです。
こういった勉強のできる子どもは、私立を第一志望として、公立を滑り止めとしています。本人に左右できない家のお金の事情で滑り止めにいかせるのは、やはり取りたくない選択です。
※参考:東京都教育委員会 平成31年度東京都立高等学校入学者選抜応募状況(全日制)
3. 私立高校の学費を工面する方法
3-1. 教育ローン
ここで多くの人は、教育ローンを考えます。教育ローンは国、銀行系、信販系とありますが、なかでも最も金利が安く、人気なのが国のもの(令和元年度の実績で年利1.71%※)です。
学生支援機構は奨学金として有名ですが、これは子ども本人が名義人となって借りるものです。子どもの借金になりますから、親としては、自分の名義で借りられる教育ローンを選びたいところです。
この思考から、迷いなく国のローンを選ばれる事例が多くみられます。
※参考: 日本政策金融公庫 金利・ご返済方法
3-2. 就学支援金
しかし、ここで申込の前に考えて欲しいことがあります。それは、国の就学支援金制度です。国では高等教育無償化の政策を打ち出していて、それは私立高校への進学も例外ではありません。
この就学支援金は、上記の教育ローンと違って、給付型なので、返還の必要がありません。他の融資との併用も可能なのが魅力です。
ただ、2020年4月までは、都道府県民税所得割額及び市区町村民税所得割額を合算した額が50万7000円未満である必要があり、上限も月額9,900円と他の融資の補完的な位置づけで提供されています(ただし加算支給あり、生活保護世帯(年収270万円以下)だと年額29万7000円)※1。
この就学支援金が2020年4月よりパワーアップします。年収590万円未満の世帯(家族構成により異なる)を対象に、私立の授業料平均額相当まで支給額が上がります※2。
世帯年収によっては、教育ローンを申し込むよりも就学支援金を利用したほうが良いです。何より返還がいりません。
※1 参考: 東京都教育委員会 高等学校等就学支援金事業について
※2 参考: 文部科学省 2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット
3-3. 高校生等奨学給付金
就学支援金は授業料を対象にしています。他に高校生等奨学給付金という制度を、国が提供しています※。これは、授業料以外の学費を補填するためのものです。
私立高校だと年額5万2,600円の支給を受けられます。もちろん給付型で、返還不要です。
※参考: 文部科学省 高校生等奨学給付金
3-4. 各自治体の修学支援
国が提供するものだけではなく、無償化の通達を受けて、各自治体も修学支援を積極的に実施しています※。授業料の軽減補助制度だったり、学費の全面的な支給であったりします。
※参考: 東京都教育委員会 就学援助事業のお知らせl
4. 国の就学支援についてまとめ
教育費というと、まず教育ローンを思い浮かべる人が多いです。
しかしまずはそのような貸与型よりも、国や自治体の提供する給付型の支援に目を向けて、それが受給できない、それでは足りない場合に、初めて教育ローンを検討する姿勢が大切です。
当然、世帯の年収やニーズに応じて、ベストな手段は異なります。
当事務所では相談者様の条件やご希望に応じて、ベストな支援制度を紹介し、場合によっては教育ローンとの上手な組み合わせ方もご提案いたします。